「キャディをアメリカでゼロから創業する」強い気持ちと確信した勝機を胸に、挑戦を決めた真意に迫る

近年、ベトナム、タイとグローバル事業を展開してきたキャディ。2023年1月26日、アメリカ法人を設立しました。これまで、ベトナム、タイでは加工のパートナー企業を開拓し、立ち上げてきましたが、アメリカでは顧客側の獲得を目指します。

 

創業6年目。側から見ると、早すぎる展開に思えるかもしれません。しかし私たちにとっては「満を持してのアメリカ」「今行かずして、いつ行く」というタイミングです。

 

なぜそう言えるのか。そしてアメリカ進出にどのような可能性を感じているのか。アメリカ事業を推進している橋本真一郎ミヒャエルさんと中村優太さんに、アメリカ事業を立ち上げる覚悟と実現したいことを聞きました。

橋本 真一郎 ミヒャエルTechnical Sales Director

新卒でトヨタ自動車、三井物産を経て、2022年2月にCADDiに入社。前職での米国事業再建に向けた経営支援の経験を活かし、9月にUSに渡り、立ち上げをリード。企業に寄り添った経営課題・現場の課題を二人三脚で解決するべく、ゼロから米国に生産拠点を持つ日系含む外資系企業の開拓営業、アライアンス提携、プロジェクトの立ち上げ等で活躍。3児のパパ。

中村 優太Project Management Senior Manager

新卒でキヤノンに入社。キヤノンのプリンタ事業にて、SCM構築に従事。米国シカゴに赴任し営業・営業企画をリード。帰任後はプリンタ事業全体の販売企画・中期戦略策定を行う。2020年3月よりキャディに参画。入社後、戦略室・新規加工領域開発を経て、半導体製造装置を中心にお客様の調達サポートを行い、2021年10月よりディレクターに昇進。2022年にベトナム立ち上げに参画、2023年よりUS立ち上げメンバーに。

キャディに惹かれたのは、壮大で難解なミッションと、メンバーの人柄

――まず橋本さんにお伺いします。大手企業2社でのキャリアを経て、なぜスタートアップであるキャディへの転職を決めたのですか?

橋本:キャディは前職の三井物産にいた頃から知っていました。2019年ごろ、あるアメリカ事業に出資する際に競合調査をしたら、創業して数年のキャディが出てきたからです。その後2021年、転職サービス経由でスカウトメールをもらって調べてみたら、順調に事業を成長させていることに驚くと同時に、製造業を本当に変えられる会社だと思いました。

 

そして『モノづくり産業のポテンシャル解放』というミッションを見て、ここで働くしかないと心に決めました。私はこれまで製造業に関わってきて、日本も海外もムダが多いことをよく知っています。中でも、多くの企業が課題を抱える調達領域での根本的な解決にキャディは取り組んでいる。そこに大きな可能性を感じました。

 

製造業は世界に2000兆円のマーケットがあり、そこに対してキャディはモノとソフトの両提供でサプライチェーンの変革を実現することで、グローバルで1兆円規模を目指しています。1兆円という数字は大きく見えますが、マーケット全体で見ればたったの0.1%。と考えると、グローバルでこの程度のシェアを獲得できる可能性もあるかもしれないと思いました。

前職でスタートアップの投資をしていた経験から「すごく良いところに目をつけているな」と思いました。

 

また私は常々、製造業の未来のためにはモノづくりとテックの融合が必要だと思っていたので、そこに本気で取り組んでいるキャディは、製造業の調達シーンを大きく変えられる可能性があると考えたのです。

――ミッションや事業に大きな魅力を感じたようですが、大手総合商社からの転職に躊躇いはなかったのですか?

橋本:ありませんでした。アメリカでは退職して自費でMBAに行く人もいますが、その人に対して「大丈夫なの?」と聞く人はほとんどいません。新しいことにチャレンジできて、自分の地力を高められる期間だと考えるからです。キャディへの入社はそれと同じ。自分に投資しつつ、モノづくり産業に還元できるなら価値のある挑戦と言えます。

キャリアを重ねても少年のように夢を語りたい

――中村さんは海外でのキャリアが豊富ですね。もともと海外志向が強かったのですか?

中村:小さい頃から、知らないことや新しい課題に向き合ったりすることにワクワクするタイプでした。未知のものを追い求めた結果、海外に目が向いた感じです。実際、海外に出ると、自分が世の中の共通認識だと思っていたことが違うと気付けるなど、発見がたくさんあって面白い。それで学生時代に経済産業省派遣のインターンでインドのケララ州に行ったのを皮切りに、社会人になってからも海外の事業に多く挑戦するようになりました。

――そうだったのですね。なぜキャディに転職したのでしょうか?

中村:前職のキヤノンには、海外でモノづくりに携われることに惹かれて入社しました。アメリカのシカゴに出向し、いろいろなチャレンジができて充実していたのですが、次第に自分の手でサービスを展開しているような手触り感がないことに少しモヤモヤするようになったんです。過去から積みあがっている強固なアセットやオペレーションの中でビジネスを大きくしている感覚があり、いつか自分自身がゼロからビジネスを創ってみたい、または1から10のフェーズに挑戦したいと強く想うようになりました。

 

また、日本に帰任後はどうしても自分自身の成長速度が落ちているように感じました。成果責任と裁量を与えられ、カオスの中でコミットし続けていたシカゴのような成長環境をもう一度味わいたいと感じました。

 

そこで、「モノづくり」・「アーリービジネスフェーズ」・「成果を求められる環境」、という3つの軸で企業を探して、見つけたのがキャディです。モノづくり産業に変革を起こすことをビジネスにしようとしているのが面白いと思いました。実際に面談などでメンバーと話してみたら、めちゃめちゃみんな熱かったんですよ。40歳の人が少年のような目でワクワクと夢を語ってくれるのが嬉しくて、僕もこういう風に歳を重ねたいと思い、入社を決めました。

アメリカに渡り、顧客と対峙する中で見えてきた可能性と課題は

――橋本さんはアメリカの立ち上げを任され、ひと足早く現地入りされましたね。ほぼツテがない状態だったと思いますが、どのように営業活動を進め、アメリカ進出への可能性を確信したのですか?

橋本:確かにツテは全くなかったのですが、紹介をいただいて、そこから徐々に営業先を広げていきました。営業活動において日本とアメリカではコミュニケーションのスタイルなどをローカライズする必要はありますが、モノづくりであることは一緒です。特に、QCD(Quality , Cost , Delivery)を満たすことが重要なので、QCDのどの部分を重要視するのか、各顧客のニーズを捉えて、それぞれにアプローチしています。

 

今、アメリカでは、米中関係の悪化によるサプライヤの見直しや、極度のインフレによる調達コストの上昇、コロナ渦での物流の混乱やストライキが起こり、サプライチェーンが不安定になっています。そのような状況ですので、調達を外部から集約して支援するキャディに対する反応はポジティブなものが多く、商機があるのではないかと感じるようになりました。

 

あとは、アメリカ市場でもキャディのように品質責任までコミットするサービスは他にないことと、他社が真似できないテクノロジーがそれを支えていることは強みだと思っています。

例えば、キャディには図面の自動翻訳システムがあります。これは図面に書かれている情報や書かれていないけれど必要な情報を、スタンダードな書き方に自動変換・自動追記してくれるキャディ独自で特許取得済のシステムです。このようなテクノロジーを用いることで、安定したサプライチェーンを実現し、お客様への価値提供に繋がっています。

 

企業を訪ねる中で、企業側の課題感やキャディの強みを再確認し、キャディはアメリカでも価値を発揮できると確信しましたし、むしろ「今行かずして、いつ行く」とさえ思いました。

――現在、徐々に具体的なお取引が進みそうとのことですが、この状況を橋本さんはどう捉えていますか?

橋本:ありえないスピードですよね。モノづくりってすごく時間がかかるんです。どんな顧客も、サプライヤーからモノを買うときに与信力などを調査するので、通常だとプロジェクトが始まるまでに半年〜1年は要します。けれど私たちは3〜4ヶ月で信頼関係を構築し、同じことを成し遂げています。

 

それが実現できたのは、ひとえにキャディがチーム一丸となって目標に向かっている会社だからでしょう。メンバー一人ひとりにバリューが染み付いているため、力を最大限に発揮しやすいのです。

 

「4ヶ月でなんてムリ!」ではなく、「どうやったら達成できるかな。みんなでやればできるよね!」と考える。顧客と会話する際も、駆け引きなどせず真摯に話して状況を理解してもらいながら進めることで信頼していただけるように努力していますキャディ独特の文化から生まれる強みの一つだと思います。

――中村さんはキャディが最初にグローバル進出したベトナムから始まり、その後タイでも活躍されていましたね。アメリカへの異動を打診されたときはどのようなお気持ちでしたか?

中村:覚悟を決めた感じですね。私がいたベトナムのチームメンバーはアメリカ系企業の就業経験メンバーも多く、グローバル展開を望んでいました。

 

これまで、キャディの顧客は日本の企業様のみでしたが、いつかはグローバル化し、アメリカのお客様の案件もやっていきたいと話していた矢先に今回の異動の話がありました。ベトナムを含むアジアで創り上げたサプライチェーンの力で、アメリカ市場を獲得してキャディ全体のグローバル化を加速させる、という目標を多くのベトナムチームメンバーが後押ししてくれました。

 

ただ、もともとアメリカ行きを望んではいたんです。製造業ではグローバルな取引は当たり前であり、キャディをグローバル企業にしていく中で、最大のフィールドであるアメリカは避けて通れません。またアメリカでビジネスを作っていくという、カオスの中に飛び込むフットワークの軽さを持っているのは僕だと思っていたので、ぜひコミットしたいと思っていました。

 

そういう意味でも「いよいよ声がかかったな」という気持ちでした。

――現在、どのような業務に取り組んでいるのですか?

中村:アメリカの多くのメーカーは、調達の負に直面しています。橋本をはじめとした営業がその課題をヒアリングし、その課題を解決するプロジェクトを立ち上げてマネジメントするのが僕の役割。受発注するため、ベトナムやタイ、日本などから最適なサプライチェーンを構築して提案しています。

 

ビジネスは、どういうことが顧客のバリューになるかを解かないと続きません。アメリカの顧客は日本の顧客と似ているところもありますが、少しずつ求めていることや考え方などが違います。キャディとして提供するサービスを柔軟に変えていかないとニーズから外れてしまうので、そこは特に注意しているところです。

本当の意味でのグローバル企業を目指したい

――アメリカ事業はこれからがスタートです。どのような気持ちで挑んでいますか?

橋本:モノづくりは、日々の積み重ねが重要だと思っています。一度完成したら終わりではなく、次のモノづくりに向けて努力や改善を怠らない、終わりのない戦いのようなもの。だと思っています。キャディはそのことを「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というシンプルな言葉で表現しています。

 

モノづくり産業のポテンシャルを解放された世界がどういう状態なのかは、私たちも朧げにしか分かっていません。しかしミッションの達成のために、日々覚悟を持って過ごしていくつもりです。

 

そして、1人の父親として、その背中を、3人の子どもたちに見せたいとも思っています。日々、子どもたちも新しいチャレンジをして、悩んだり、失敗したりしながら、成長しています。父親である私が、今まで築いたものを捨てて1からやって成功する姿を見せられたら、何か伝えられることも増えるのではないかなと思っています。今は離れて暮らしていますが、朝にビデオ通話で子どもたちの笑顔を見れると1日頑張れます。そんな子どもたちに良い影響を与えるためにも、アメリカで私自身も大きく成長したいですね。

 

中村:僕たちは「10%の成長でいいか」ではなく「200%の成長が当たり前」と考えています。同時にアメリカの方が市場が大きいのだから、当然ながら日本を超えてやるんだという覚悟を持って挑んでいます。

 

当然、100%成功する確証はありませんが「やる」と決めています。それは僕たちの事業に、会社の将来を懸け、必死で協働してくれているパートナーの加工会社さんがいるからです。だからこそアメリカで事業を推進する不確実性を背負い、「アメリカでゼロからキャディを創業するんだ」という強い思いを持っています。

――今後の展望を教えてください!

橋本:数年で日本よりも大きな事業に成長させ、本当の意味でのグローバル企業を目指したいと考えています。グローバル企業と言われる多くは、どこかの国に本社機能があり、どうしてもそこの判断を中心に各拠点が動ているようにみえます。キャディでは各拠点が独立した形で経営判断し、かつ連携しながら事業を展開していくことを目指したいですね。

 

そうして、日本にいる若者が「海外で働くならキャディに行きたい」と思ってもらえる企業になりたいです。日系企業でも面白いことできるんだぞというのを見せていきたいと思っています。

 

中村:アメリカ進出した製造業スタートアップの成功例になりたいです。日本国内で完結している企業がアメリカでもモノづくりがしたいとなったときに、キャディをモデルケースにしてもらえる状態を作りたいと考えています。

 

また橋本が話したように各拠点が経営判断することで、日本本社が関与しなくてもどんどん事業が生まれていく状態を目指したいです。各地で独自のイノベーションが生まれていくのが理想だと考えています。

――では、どのような人と一緒に働きたいですか?

橋本:代表の加藤がよく言っているように、大事なのは「同じ夢を追いかけられるか」だと思っています。優秀で経験豊富であることはもちろん魅力的ですが、一つ屋根の下で同じ北極星を見ながら語り合える人が仲間になってくれたら嬉しいです。時にうまくいき、時に失敗する中でも一緒に仕事を楽しみましょう!

 

中村:チャレンジングな環境で熱量のあるメンバーと働きたい人はぜひ来てください!僕はキャディで働いていて、毎日幸福だなと思っています。とてつもなく大きな課題に、最高の仲間と向き合いながら働けることってあまりありません。そのアメリカ編が始まると思うと今、最高にワクワクしています。

 

キャディって甲子園を目指す野球部って感じなんです。一人だと到達できない場所をみんなで目指している感覚。ベンチャー企業だから失敗して方向修正することも多いけれど、9回裏で得点取れればそれでOK。そういう気持ちで一緒に目標を目指してくれる人が仲間になってくれたら嬉しいですね。